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世界同時株安はウソである

5月11日の日経平均株価は、前日比3.08%(909円安)の28,608円で取引を終えました。また、台湾の加権指数も3.79%の下落となり、一部報道では「世界同時株安」という見出しが目立ちました。しかし、本当に世界同時株安だったのでしょうか。

実際の各国株価指数を以下に一覧化してみると、報道では見えない実態が浮かび上がってきます。

地域指数名終値前日比変化率
中国上海総合指数3441.85+13.85+0.40%
中国CSI3005023.06+30.64+0.61%
香港ハンセン指数28013.81-581.85-2.03%
韓国KOSPI3209.43-39.87-1.23%
台湾加権指数16583.13-652.48-3.79%
豪州S&P/ASX2007097.00-75.80-1.06%
シンガポールSTI指数3144.27-38.14-1.20%
マレーシア総合株価指数1577.64-6.28-0.40%
インドネシア総合株価指数5938.35-37.44-0.63%
フィリピン総合株価指数6326.83+9.42+0.15%
ベトナムVN指数1256.04-3.54-0.28%
タイSET指数1578.93-9.22-0.58%
インドSENSEX指数49161.81-340.60-0.69%
インドNSE指数14850.75-91.60-0.61%

こうして見てみると、日本、台湾、香港こそ大きく下げましたが、それ以外のアジア諸国では小幅な下落や上昇を見せた市場もあり、「世界同時株安」とは言いがたい状況でした。たとえば、3度目のロックダウンに踏み切ったマレーシアや、新型コロナ「インド株」が拡大するインドでも、下げは比較的限定的です。

それにもかかわらず、「コロナ感染拡大で世界株安」といった浅い解説が見受けられるのは興味深い現象です。筆者としては、そのような表面的な分析には与しません。

さらに、個人投資家に人気のある一部のブログでは、SQ(特別清算指数)を巡る「売り仕掛け」など、根拠に乏しい推論が展開されていました。これでは、冷静な投資判断をしたい読者にとって有益な情報とは言えません。

さて、ここで少し視点を過去に戻してみましょう。先週末、米国では雇用統計が発表され、予想を大きく下回る結果となりました。このことから、市場では「金融緩和は継続されるだろう」との見方が優勢となり、NY市場では金曜日に買い戻しが入り、史上最高値を更新したばかりでした。

その後、週明けのNY市場では朝方こそ高く始まりましたが、引けにかけて売り込まれる展開となりました。中でも、CITIが目標株価を引き下げた一部グロース株が下落を主導しました。

この状況をどう読み解くか。5月11日のアイリンクインベストメント会員向け放送では明確に解説いたしましたが、ここではその要点を簡潔にご紹介いたします。

それは、「物色の矛先が変わった」ということです。

やや抽象的に聞こえるかもしれませんが、以下のようなロジックで理解いただけると分かりやすいかと思います。

これまでの市場ロジック(A):
「米雇用統計が予想を下回る」
→「金融緩和が継続される」
→「株式市場に資金が流入する」

現在の市場ロジック(B):
「米雇用統計が予想を下回る」
→「金融緩和が継続される」
→「短期的に株は買い戻されるが、上値を買う投資家は限定的」
→「結果として株は利食い売りが優勢」
→「インフレ圧力と金融緩和が続く中、利食い資金がコモディティ(商品)市場へ流入」
→「資源国や新興国市場への資金移動」

このように考えると、いま注目すべきは「Aの論理」ではなく「Bの論理」であり、その上で日本株・米国株でどのセクターを狙うかが重要な判断材料となります。

実際、当社アイリンクインベストメントでは、複数の銘柄について空売りと買いの両面からポジションを構築しており、それぞれが大きな値幅を伴って展開しています。日経平均が900円を超える下落を記録したこの日も、買いポジションで20%以上の利益を確保できたケースがありました。

投資のプロによる視点と分析が、いかに有効であるかを知っていただければ幸いです。

なお、同日公開した動画ブログでは、話題の仮想通貨「柴犬コイン」についても冒頭で取り上げております。こちらもあわせてご覧ください。

株式会社アイリンクインベストメント
岩本壮一郎

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